EMC対策を効率化する遠方電磁界の推測機能を搭載した事前検証システムの開発

ペリテックが平成25年度戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)において開発したEMCテスタ(近傍電磁界測定システム)をご紹介します。

  • プロジェクト名: EMC対策を効率化する遠方電磁界の推測機能を搭載した事前検証システムの開発
  • 川下の抱えるニーズ:小型かつ安価で高精度な近傍電磁界測定システムにより、電子機器開発における電磁界ノイズ対策設計を効率化
  • 高度化目標:多種多様な電子機器共存環境でのEMC技術の高度化

研究開発の背景・目的および目標

現在、スマートフォンに代表される情報通信機器は、社会生活になくてならないものとなっている。そして、それらの電子機器は非常に速いスピードで小型・高密度集積化、薄型化、軽量化、高機能化が進んでいる。このような進化を支えているのは、電子機器内部にある高性能マイクロブロセッサーや多機能無線モジュール等の電子デバイスの実装によるものと言える。しかし、その半面、高度なデバイスを実装することによリ、従来よりも電子回路から発生する電磁ノイズが増加し、他の電子機器や回路基板の誤動作などを起こす問題が生じている。
このため、現在の電子機器開発においては電磁ノイズを放射させないためのEMC対策を織り込む必要がある。
また、国内外で電磁ノイズ放射に対する規制も強化され、規制に適合した製品でないと販売できない状況である。

子機器や回路基板の誤動作などを起こす問題

このような規制に適合していることを証明するためには、非常に大掛かりな装置の利用を含む、手間の掛かる評4西が必要となり、コストや時間面から製品開発上のボトルネックになっている。電磁ノイズ放射を評価する際、大型の電波暗室で評価をする必要がある。しかし、これらの電波暗室は建設費用及び維持費が高額であリ、全ての企業が所有することはできない。また、所有している企業においても非常に多くの検査対象が存在し設置場所及び検査時間の制約からユーザーが十分に利用できない場合もある。

EMC評価の問題点

そのため、電子機器、自動車、半導体、医療機器などのメーカーは、設計の上流段階からフェーズごとにEMC対策の効果を確認出来る安価で、かつ小型・簡便な評価装置を切望しでいる。すなわち、企業の設計者が自在に電磁のイズ放射の評価が行える環境を確保し、EMC対策を考慮した最適設計を早い段階で達成することで、電子機器の設計におけるコストや時間の無駄を最小にでき、その結果、電子機器のさらなる小型・高度化を可能にする。本研究ではEMC対策を効率化できる事前評価システムの開発を目的とした。

EMCの事前評価が簡素化することで設計へのフィードバックが容易である

研究開発の概要

大型の電波暗室を用いて電磁ノイズ放射を測定するのは遠方電磁界を測定するためである。一方、電子機器に近いエリアの電磁界は近傍電磁界として扱われる。本研究では目標として、電波暗室等を使用しないで遠方電磁界を推測する開発を行った。これは、近傍電磁界の分布を位相情報も含めて測定し、遠方の電磁界分布を推測する方法である。
これが実現出来れば、遠方電磁界測定を電波暗室のような大型設備を使用せずとも、小型の測定装置を使用した近傍電磁界分布測定のみで推測でき、EMC対策の測定が格段に簡易化されるはずである。この方式では、近傍の電界と磁界の分布を位相情報も含めて測定出来る装置が必要である。

近傍の電界と磁界の分布を位相情報も含めて測定出来る装置

そこで、1年目は位相情報を高精度に測定できる測定器の構築に取り組んだ。NI PXIモジュールを用いてマルチチャンネル入力に対応した測定ハードウェア及びソフトウェアを実現した、この測定器では100MHzー2000MHz、-30dBmの測定条件において位相差精度±0.1度以内を実現できた。

2年目は近傍電磁界を測定するスキャナ装置の開発に取り組んだ。従来あるスキャナ装置は電子回路基板等の平面における近傍電磁界を測定する目的のため、大型の電子装置等の任意の点の測定には不向きと考えた。そこで赤外線力メラを用い3 次元の位置情報を捉えることができるシステムとり小型形状のプローブを組合せた3次元スキャナ装置を実現した。

3次元スキャナ装置

3次元スキャナ装置及びソフトウェアを用いると簡便に任意箇所の近傍界を測定することができる。

近傍界を測定

3年目は前記の位相差測定器および3次元スキャナ装置を用いた評価環境のソフトウェアのユーザーインターフェース改善と、EMC対策効率化の事前検証システムしての3m法電波暗室または10m法電波暗室との比較検証実験を実施した。

開発した製品

株式会社ペリテック社内の実験室に3次元スキャナ装置による事前検証システムを構築した。 このシステムを用いて測定し箱型の電子機器から発生した遠方界放射パターンを推定した。

また、本事前検証システムでは、遠方界推定機能だけではなく、近傍界ノイズの位相差情報から演算して、ノイズ発生源を特定する探査機能も機能のーつとして実現している。両機能を用いることによリ、EMC評価の効率化へ寄与すると考える

3次元スキャナ装置による事前検証システム

掲載WEBサイト

サポインマッチ・ナビ – 中小企業庁 サポイン技術紹介
https://www.chusho.meti.go.jp/sapoin/index.php/cooperation/project/detail/1495

中小企業庁 高度戦略基盤技術高度化支援事業研究 開発成果事例集
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/sapoin/senryaku/download/H24-25fyPj.pdf#page=44