3.校正とトレーサビリティ|電気電子の基礎講座

みなさんこんにちは!

計測に必要な電気・電子の基礎講座へようこそ。

第三回は、校正 トレーサビリティ

この2テーマについて学びましょう。

校正とは

いきなり質問をしますが、あなたの部屋にある時計の1秒は、間違いなく1秒でしょうか。

実はほとんどの計測器は、作成段階で必ず国際標準に対して差異が生じます。

また、長く使用していれば、パーツの劣化などによって差異が生じたり、大きくなったりすることもあるのです。

では、世間一般の計測器に表示される値は信用できないのでしょうか? 

そんなことはありません。

この差異の大きさを確認し、信用できる値かどうかを証明するのが校正(較正)です。

計測器に表示される1秒は、本当に1秒なのか?

計測を語る上では、この値がどこまで正しいのか突き詰める必要があります。

校正は、「国際標準」を真値と考え、真値と比較してどれだけ差異があるかを示すものです。

この差異には、正確度精度というものが含まれます。

近年の ISO/IEC17025規格などでは、正確度と精度を合わせて不確かさという概念が用いられています。

校正の必要性

では、なぜ校正が必要なのでしょう? 

先ほどもお話しましたが、機器は放置しておけば真値との差異が広がっていきます。

この広がっていく差異のことを器差と呼びます。

器差が基準を超えた場合、メンテナンスをして正常にする必要がありますが、校正を行わなければその値は把握することができません。

もしもメンテナンスを行わずに放置すれば器差は徐々に大きくなり、正確な計測を行うには適さないほどになることもあるのです。

正確な値が必要な計測においては、必ず校正とメンテナンスの行き届いた計測器を使用するよう心掛けましょう。

ペリテックでも正しい計測のため、定期的に社内の計測器を校正に出しています。

また、校正の方法や度合いは常に一定ではありません。

例えば重さを計る場合、その値は重力の影響を受けます。

地球上の重力は一定ではなく、極地と赤道直下では約0.5%ほど違います。

重力が異なれば、同じ機器で同じ対象物を計ったとしても、値に差が出てしまいます。

これでは問題がありますから、使用場所や条件に合わせて、適切な結果となるような校正が必要なのです。

トレーサビリティ

先ほど、校正の話の最初に「たいていのものは作成段階で必ず国際標準と差異が生じる」という内容が出てきました。

ここでは、それがなぜかを解説し、その対策がどのように行われているのかをお話しします。

作成段階で差異が生じる理由としては、国際標準と、計測器を作成する企業の標準にそもそも差異があるためです。

国際標準をもとにして国家標準が作られ、それをもとに一次標準、それをもとに各企業の社内標準、それをもとに各企業の納品物…

というように比較を重ねるたびに、国際標準と比較したときの差異が累積するのです。

この比較の連鎖、つまりは国際標準からどういった経路で値を持ってきて、この計測器が今どのような状態にあるのかを示すものを、トレーサビリティといいます。

トレーサビリティというと流通システムを思い浮かべるかもしれませんが、両方とも「追跡可能性」という意味ですので、細かい違いはあれど、出自と経路がわかるようになっているシステムという部分は変わりません。

また、計測分野で使用されるトレーサビリティを特に計量トレーサビリティと呼ぶこともあります。

トレーサビリティの無い計測器はこの連鎖が切れているため、値がどれだけ国際基準と差異があるのか示すことができません。

厳密な値が必要な計測では、トレーサビリティのある正確な機器を使用し、間違いのない計測を心掛けましょう。