熱空調計測システムの開発
株式会社ペリテックが過去に開発した車両の熱空調計測システムの開発事例を紹介します。
背景
自動車業界では様々な状況における車両の情報を収集し、これを解析、利用する取組みが行われています。特に、高温/低温の環境下での車内の情報や、実際の走行中の情報など、特殊な状況におけるデータ収集を行う試験が頻繁に実施されています。
これらの試験は実験環境の異なる複数の拠点で実施されることもあり、データの信頼性のバラツキにより拠点間のデータの直接比較ができずに、再実験を余儀なくされることも少なくありません。
これらに対応する、特殊条件化で運用可能な、全拠点同一仕様の計測システムを開発することを目的とします。
要求仕様
本計測システムの基本的な要件は以下となります。
全拠点で同じ計測仕様でデータ計測/処理ができること
- 拠点間で計測ツール仕様に差異が発生しないこと
- 全拠点で同じ仕様の計測ハードウェアを導入できる。
- 全拠点で同じ仕様のソフトウェアを導入できること。
- ハードウェア故障は各拠点にて対応可能なこと。
これらにより、全拠点で同じツールで実験することを可能にする。
HML以外は、許可ライセンス数以内に使用制限することが可能なこと。
全拠点で計測データを共有できること。
- 計測したデータは他拠点でも参照できる
- 他拠点でデータを参照する担当者が、取得データの詳細情報を確認することができる
課題
1.耐環境性、コンパクト性
実験の条件によっては低温から高温まで一般的な計測システムでは対応不能な温度領域での運用が必要となる。
また、車載での運用が想定されるため、システムのデータ集録部はコンパクトにする必要があった。
2.省配線
既存の同様のシステムでは、大型環境槽を用いた実験を行う場合、車両にはセンサのみを取り付け、コントロール室に設置した計測部まで配線を延長して接続、計測を行っていた。
この際、収集信号の種類、チャンネル数分の配線を隣室まで延長する必要があり、膨大な量の配線が必要となっていた。
3.汎用性
実施する試験は多種多様で、試験により必要な信号が異なる。
必要に応じて収集チャンネルの種類、数を増減できる構成であり、必要最低限のデバイスでの運用を可能とする。
ソリューション
システム構成
データ集録はNI製品を基本ハードウェアとして採用して、構成した。
- cDAQ-9188XT:CompactDAQ 8スロットEthernetシャーシ
- NI 9205:アナログ入力モジュール、16ビット、250 kS/秒、±200 mV~±10 V、32チャンネル
- NI 9214:等温熱電対入力モジュール、24ビット、1088 S/秒、±78.125 mV、16チャンネル
- NI 9401:デジタルI/Oモジュール、100ナノ秒、5 V/TTL、8チャンネル
- NI 9423:シンクデジタル入力モジュール、1マイクロ秒、30 V、8チャンネル
- NI 9862:CANインタフェース

ソフトウェア
ソフトウェアは起動時にハードウェア情報を読み取り、モジュール構成の変更に対応可能とした。
試験条件、チャンネル情報等は事前に作成された試験予定ファイルから一括して取り込むことができ、取り込み後も収集データと共に管理、他実行環境への移出ができるようになっており、試験の継続的な管理、運用が可能となっている。

- 一つの試験設定の中で条件を変えて複数の実験を実施する形で登録、運用が行える
- 設定情報、収集データはファイル化して管理し、以前の試験を読み出して表示/続行可能
- データ収集時には条件変化の目印となるイベント情報をデータに付加することが可能

- 収集中の全チャンネルの値を数値でリアルタイムに確認可能
- 同時に10チャンネル分の値を確認可能で、10チャンネルずつ切り替えて全チャンネルをモニタする

- 数値モニタと同様に収集中の全チャンネルの値を時系列グラフで10チャンネルずつ切替えて確認可能

- 収集済みデータの任意のチャンネルの状態を実験の単位で時系列グラフに表示可能
- イベント情報の表示、編集が可能
導入効果
1.耐環境性、コンパクト性
cDAQ-9188XTの動作温度は、-40℃から70℃のため、車内等の環境下にも耐えることができた。
また、車内はスペース的な問題もあったが、非常にコンパクトなため、難なく設置が可能だった。
2.省配線
CompactDAQを試験環境化に設置できるため、今までコントロール室に伸びていた試験箇所分の熱電対のケーブルをLANケーブル1本にすることができた。
3.汎用性
今回対応したCモジュールであれば、必要に応じてcDAQ-9188XTを1台~4台使用する構成の範囲で自由に入れ替えて使用できるため、必要最小構成での運用が可能な利便性の高いシステムとなった。
まとめ
本システムの開発により、複数拠点にて多種多様な実験を同じシステムを使用して実施できるようになり、直接のデータ比較も可能となった。
運用の上でも最小限のサイズの計測部を、少ない配線で容易に設置可能となり、試験実施の難易度が大幅に下がった。
結果的に1回の実験のコストが下だったうえ、再実験も不要となったため、従来と比較して大幅な効率化を実現できた。
また、本システムで保存される収集データファイルをNI DIAdemで直接読み込み、CSVやASAMなど様々なレポートを出力することが可能である。

現在ではLAN接続により社内のネットワーク、サーバを介して海外拠点とも実験結果を共有することが可能となっている。また、システムのコンパクト性、利便性を更に追求し、既存システムのPCに代わりcDAQ-9134のようなコントローラ内蔵型CompactDAQを採用し、動作状況をHUDに表示するシステムを実現している。


