メーカー・製造業を変革する3Dプリンタ

製造業における3Dプリンタの影響力

3Dプリンタ(3次元積層造形装置)は、PCでデザインしたデータを出力するだけで3次元の物体を造形できる産業用ロボットの一種です。3Dプリンタ技術自体は30年以上前から開発されており、近年では10~20万円程度で購入できる個人向けのものも登場。市場を賑わせている一方で、個人が自宅で手軽に3Dプリントを利用できてしまう状況を不安視する向きもあるようです。なお、BtoB向けの製品も中小企業へと広まっており、設計・製造行程に大きな変化を与えていると言えるでしよう。

3Dプリンタ導入の具体例

1.金型鋳造への利用で大幅コストカットが実現

ドイツの中小企業Robert Seuffer GmbH&Coは、プラスチック部品の成形に利用する射出成型金型を3Dプリンタで製造することにより、金型鋳造コストを97%もカットしたそうです。通常、射出成型金型の製造には長い時間と多くの費用がかかるのですが、3Dプリンタを利用したことによって設計に2~3日、出力に1日という驚くべき工期短縮を実現。さらに40.000ユーロかかっていたという費用は、1/40の1.000ユーロまで抑えられたそうです。

金型鋳造

2.組み立てまでを一括で行える統合型の製造

従来、多くの製品はそのプロセスの中で多種におよぶパーツを個別に製造し、組み立てる必要がありました。しかし3Dプリンタを使えば、丸ごとひとつの製品を一括で製造することが可能に。そのため、組み立てにかかる人員コストが削減され、時間も大幅に短縮できます。さらに、3Dプリンタで出力した製品の方で品質に優れているというケースもあるのだとか。製造業に限って言えば、コストやスピードなどの面で享受できるメリットは非常に大きいといえます。

統合型の製造

3.「3D」と「VR」の融合で変わる設計・製造

Microsoftを中心に開発された3MFファイル形式は、CAD間のファイル交換や3Dプリンタヘの反映を可能にします。しかし、それ以上に期待されるのがデジタル製造の幅の拡張です。同社が開発したVR(仮想現実)技術およびヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」と3MFが統合されると、PC環境なしにCADなどのソフトウェアをジェスチャーコントロールすることが可能になるのだとか。実用化・普及すれば、設計・製造工程に大きな変化をもたらすでしよう。

3DとVRの融合