RFIDテストシステムの構築
RFIDテストシステムの開発事例を紹介します。
過去、ペリテックが開発した事例となります。
背景
乗車カード、電子マネーなどのICカードのみならず、流通、トレーサビリティなどの用途にも飛躍的に普及しているRFID技術。しかし、このRFIDを開発、測定するシステムがなかなか見つからないという課題を凸版印刷株式会社の担当者様から伺った。
今まで数多くの分野のテストソリューションを提供していたペリテックであるが、RFIDのテストシステム開発の実績はなかったので、日本NI(旧社名:National Instruments)社の営業部長である五味氏に相談したところ、RFIDテストシステムのノウハウを持った国外のアライアンスと提携してみないかとの提案があった。
数多くの分野のテストソリューションを日本で提供し実績のあるペリテックと、中国でRFIDテストツールキットを提供しているVI Service Network社(以下VISN社)が提携することで、RFIDの分野においても我々のソリューションを提供できると確信を持ち、凸版印刷様の協力の下、このプロジェクトはスタートした。
課題
当初、VISN社が提供しているRFID テスタツールキットソフトウェアは、日本の顧客向けに作られたものではなく、また顧客の要望が反映されていなかったため、不十分な部分が多かった。そのため、凸版印刷様へ納入後も改善点が残されていた。
- ヌル点の問題
UHF 帯のRFIDタグから受信した応答が読めるはずのパワーで送信しているはずだが、ある位置や周波数によって読めるときや読めないときがあるという現象が起こった。これは UHF 帯や2.45 GHz 帯でよく起こるヌル点という現象であることがわかり、ヌル点でデコードを行うことができなかった。 - 周波数特性検査時間の短縮化
日本でRFIDを普及させるためにはタグの応答周波数特性が特に重要であった。これは日本のUHF帯は他の国々よりも使用できる周波数帯域が極端に狭いため、海外で使用される RFID タグをそのまま使用することが難しいためである。様々な周波数、パワー、位置、環境などの条件を検査しなければ日本の周波数領域で適切に使用することができない恐れがある。そのために今までは検査に1日以上の日数を費やしており、早急に検査時間の短縮化が望まれていた。
システム構築
ハードウェア
- NI製ベクトルRF モジュール(2.7 GHz アップコンバータ「NI PXI-5610」
- 2.7GHzダウンコンバータ「NI PXI-5600」
- FPGAベースのIFトランシーバ「NI PCI-5640R IF-RIO」
ソフトウェア
- LabVIEW
- RF計測ツールキット
スペクトラム計測ツールキット、上級信号処理ツールキット、LabVIEW FPGAモジュール - VISN社の RFID テスタツールキット
RFID のリーダエミュレート、タグエミュレート
結果
- LabVIEW によりヌル点の解決方法を見出すことに成功
ペリテックと VISN 社がこのヌル点の解決策を見出すのはとても困難であった。
しかし、凸版印刷株式会社の担当者様が RFID テスタを納入してから短期間で LabVIEW を習得されたことで、問題解決策の提案をいただけるようになった。
LabVIEWを使って問題点を共有することで、短期間の内に受信した IQデータの実部と虚部に応答信号が観測されていることに気が付き、ペリテックはその部分のデコードができるように処理を作成し改善することができた。
最終的にVISN社が提供しているツールキットにその機能が追加され、解決不可能と考えられたヌル点でのデコードが可能となった。 - FPGA ボードを使用することにより周波数特性検査時間の短縮化に成功
検査時間を短縮するためにはどうしてもソフトウェアだけでデータを処理することは不可能であった。そのため検査時間を短縮するためにどうしたらいいか思考錯誤した結果、IF 帯の処理を FPGAで行うことで対応した。LabVIEWでFPGAを構築することが可能で、しかもNI社にはIF帯のFPGAトランシーバ PCI-5640R (IF-RIO)が提供されており、そのIF帯の処理をIF-RIOで行うことにより一回のコマンドを50ミリ秒程度で送受信することができるようになり瞬時に周波数特性検査を行うことが可能となった。
これで今まで1日以上かかっていた検査がたった数十秒になり、飛躍的に開発スピードが短縮され、コストの削減につながった。
まとめ
難解なRFIDテストシステムの構築もLabVIEWを使用し問題点を顧客と共有することにより短期間で解決策を見出すことができた。
ペリテック、VISN社、凸版印刷株式会社の3社の協力によりこの RFID テスタはとても強力なシステムとなり、顧客自身がLabVIEWを使って評価、実験を行うことでスムーズに課題点が共有され、その後も本RFID テストシステムは進化し続けている。
また、独自のシステム構築や検査時間の短縮、開発時間の削減など、顧客の要望などは豊富な NI製品の中から最適なものを選択できるノウハウを持ったペリテックがシステムを短期間で構築することが可能でき、顧客それぞれの要望に応じて独自のシステム構築が可能となる。その上、RFIDの進歩、普及が目覚しい中においても NI製品を使えばすばやく柔軟に対応できるのでシステム投資も最小限に抑えることができる。
測定器単体では解決が難しい課題でもNIのソリューションとシステムインテグレータのノウハウ、およびLabVIEWを通じて顧客の成功を共同で提供することが可能となる。