高性能測定器を核とした自動化システムの構築

「コマンドの迷宮」を突破し、資産価値の高い計測プラットフォームを実現する

1. 現代の計測自動化が直面する「複雑化」の壁

かつての自動計測システムは、デジタルマルチメータ(DMM)やシンプルな電源を用いて、単一の数値を読み取る、あるいは設定するといった点の作業が主でした。このような環境下では、制御プログラムも比較的単純であり、エンジニアが片手間で作成したスクリプトでも十分に機能していました。

しかし、IoT、5G/6G通信、EV(電気自動車)などの技術革新に伴い、現在の開発・製造現場ではテスト要件が飛躍的に高度化しています。それに伴い、広帯域オシロスコープや高性能スペクトラムアナライザ、ベクトル信号発生器といった多機能な測定器を複数台「線」でつなぎ、ナノ秒単位の同期を取りながら高度な解析を自動化することが求められています。

測定器が高性能化・多機能化する一方で、システムを構築するエンジニアは「多すぎるコマンド」「解読不能な肥大化したマニュアル」「機器内部の複雑な依存関係」という新たな課題に直面し、本来の目的である「データの取得と解析」にたどり着く前に多大な工数を消費しています。

本資料では、これらの課題を構造的に解決し、持続可能で資産価値の高い計測プラットフォームを実現するためのペリテック流のアプローチを提案します。

2. 現代の測定器が抱える「自動化の難所」

最新の測定器を用いた自動化システム構築を困難にしている要因は、単なる「プログラミングスキルの不足」ではなく、機器そのもののアーキテクチャに起因しています。主に以下の3点に集約されます。

① 膨大かつ複雑なコマンド体系(SCPIの罠)

多くの測定器はSCPI(Standard Commands for Programmable Instruments)という標準規格に準拠していますが、高性能な測定器になるほど、メーカー独自の拡張コマンドが追加され、1台あたり数千から万単位の制御コマンドが存在します。

  • 依存関係の複雑さ:「周波数スパン(設定A)を変更すると、分解能帯域幅(設定B)が自動的に初期化される」といった、機器内部の暗黙のルールが多数存在します。これにより、プログラムが予期せぬ動作(エラーの発生や誤った条件での計測)を招きやすくなります。
  • マニュアルの肥大化: コマンドリファレンスは数千ページのPDFに及びます。目的の動作を実現するために必要なコマンド群を探し出し、正しい順序で送信する手順を解読する作業が、システム開発工数の大半を占めてしまうのが実情です。

② 解析機能のブラックボックス化とデータ転送の壁

最新のオシロスコープやスペクトラムアナライザは、単なる波形表示器ではなく、内部にWindowsなどのOSを搭載した「専用PC」とも言える構造を持っています。

  • モードの壁: 掃引(スウィープ)モード、リアルタイムモード、IQ解析モードなど、動作モードを切り替えるたびに有効なコマンド体系が変化し、状態管理が極めて煩雑になります。
  • データ転送のボトルネック: 高サンプリングレートで取得した数 GB に及ぶ生データ(Raw データ)を、LANやUSB経由で制御用PCに転送しようとすると、通信帯域がボトルネックとなります。PC側でのリアルタイム解析とデータ転送の両立は、従来の単純なコマンド送受信アーキテクチャでは困難です。

③ ソフトウェアの属人化と陳腐化

現場のエンジニアが「とりあえず動く」ことを優先して作成したモノリシック(一枚岩)なプログラムは、作成者にしかメンテナンスできない「ブラックボックス」と化します。このような属人化したシステムは、PC のOSアップデート、測定器のファームウェア更新、あるいは機器のディスコン(製造中止)に伴うリプレース時に容易に崩壊し、再構築に莫大なコストを要求します。

3. ペリテックによるソリューション提案

ペリテックは長年の試験と計測のインテグレータ―企業としての豊富な実績と知見を活かし、LabVIEWとTestStand を中核としたアーキテクチャによって、前述の課題を「力技」ではなく「構造」で解決します。

測定器のネイティブコマンド(SCPIなど)を直接メインプログラムに記述するのではなく、測定器の機能を「カプセル化」した中間層(ドライバ層)を設けます。

  • 手法: 例えば「Peak Searchを実行し、最大周波数と振幅を取得する」という一連の動作を、一つの関数(LabVIEWのVIなど)として定義します。この関数の中に、メーカー特有の数十行に及ぶコマンド送受信やステータス確認の処理を隠蔽(カプセル化)します。
  • 効果: メインプログラムは「Peak Search」という抽象化された命令を呼ぶだけになります。将来、測定器をA社製からB社製に入れ替えた場合でも、この中間層(ドライバ)を差し替えるだけで済み、最上位の試験プログラム(数万行に及ぶロジック)を一切書き換える必要がなくなります。

システムの保守性を劇的に向上させるため、「計測器の制御(How:どのように測るか)」と「試験の手順(What:何を、どの順番で、どう判定するか)」を完全に分離するアーキテクチャを採用します。これを実現するのがテスト管理ソフトウェア「TestStand」です。

階層役割解決する問題・もたらす効果
シーケンス層
(TestStand)
試験順序の定義、合否判定基準(リミット値)の管理、レポート生成、ユーザー権限管理。試験内容の追加・変更をGUI上で容易に行えるようにし、プログラミング知識のない担当者でもテストフローを構築可能にする。属人化の排除。
計測ロジック層
(LabVIEWなど)
測定器から数値を読み取る、波形データを解析する、フィルタリングやFFTなどの複雑な計算処理を実行する。測定器内部の処理能力に依存せず、PC側の強力なCPU/GPUを用いて高速なデータ処理を実現する。
ハードウェア層
(IAL / ドライバ)
各種測定器(USB / LAN / GPIB/ PXI)との物理的な通信。コマンドの送受信とエラーハンドリング。機器特有のコマンドの依存関係や通信プロトコルの違いをこの層で完結・吸収させる。上位層への影響を遮断する。

複数の測定器を連動させる場合、ソフトウェアによるトリガ制御ではミリ秒単位のジッタ(遅延のばらつき)が発生します。ペリテックでは、ハードウェアベースのタイミング同期技術(PXIプラットフォームやIEEE1588など)を活用し、複数機器間のタイミングをナノ秒単位で制御します。

また、取得した大容量の波形データは、一般的なCSV形式ではなく、TDMS形式(計測データ専用のバイナリ形式)で保存します。これにより、ディスクへの書き込み速度が飛躍的に向上し、テスト情報(シリアル番号、温度条件などのメタデータ)と波形データを一つのファイルで構造的に管理できるため、後処理での解析スピードが劇的に向上します。

4. 期待される導入効果

本提案のアーキテクチャを採用することで、企業は単なる「自動化」を超えた、以下のような戦略的メリットを享受できます。

  • 開発工数の大幅削減とROIの向上

複雑なコマンド操作や計測ロジックが「再利用可能な部品(モジュール)」として蓄積されます。これにより、新規プロジェクトや2回目以降のシステム構築スピードが飛躍的に向上し、投資対効果(ROI)が最大化されます。

  • 品質の安定化とヒューマンエラーの排除

高性能機特有の複雑な「設定ミス」をソフトウェアが自動的にチェック・補正します。熟練エンジニアのノウハウがシステムに組み込まれるため、新入社員や別部門の担当者が操作しても、常に同じ精度・同じ条件で信頼性の高いデータが取得可能になります。

  • 資産のロングライフ化(設備投資の最適化)

抽象化レイヤの存在により、ハードウェアの制約からソフトウェアが解放されます。10年前のレガシーな測定器と、最新鋭の測定器を1つのシステム内でシームレスに混在させることが可能となり、既存の設備資産を無駄なく活用しながら段階的なアップグレードが行えます。

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ペリテックは、お客様が保有する「高性能測定器という強力な武器」のポテンシャルを最大限に引き出し、誰でも安全かつ確実に扱えるようにするための「計測プラットフォームのOS」を提供します。

まずは、現在お客様の現場で最も「手ごわい」と感じている測定器の自動化、あるいはボトルネックとなっている検査工程の改善から、計測システムのプロフェッショナルである私たちにご相談ください。