LabVIEWを使用したGUI設計・作成テクニック

計測を理解したSIとして、使いやすく・見栄えのよいHMI設計を実現する
はじめに
測定・検査システムの開発において、GUI(グラフィカルユーザーインタフェース)の設計は後回しにされがちな領域です。「動けばよい」という発想で開発が進んでしまうケースは珍しくありませんが、その結果として現場では次のような問題が生じます。
- 直感的に操作できず、オペレータの誤操作が頻発する
- 機能が完璧であっても、古いデザインゆえに顧客からの評価が低くなる
- 操作手順書が複雑化し、教育・引き継ぎコストが増大する
本記事では、LabVIEWを用いた計測・検査システムのGUI設計において重要な「設計上の注意点10か条」と、実装を支える「基礎テクニック」を、豊富な画面例を交えて解説します。ペリテックが多数の実案件で積み重ねてきたノウハウを凝縮した内容です。
GUIデザインの本質:「使いやすさ」とは何か
GUIの良し悪しは、見た目の洗練度だけで判断できません。「シンプルで美しい」ことと「使いやすい」ことは、必ずしも同じではないからです。
身近な例として、某コンビニエンスストアのセルフコーヒーマシンを取り上げます。下図(左)は英語表記のみのシンプルなデザインです。洗練されてはいますが、「REGULAR」と「LARGE」という英語表記だけでは、ご年配の方にはサイズ感が伝わりにくく、誤操作につながることがありました。
結果として、テプラによる日本語補足(下図・右)で対応するという状況が生まれました。

この例が示すのは、ユーザー層・使用環境・操作文脈を考慮した設計こそが「使いやすいGUI」につながるという本質です。計測・検査システムも同様で、現場のオペレータが直感的に操作できる設計を目指すことが重要です。
ポイント
LabVIEWのモダン制御器(Modern Controls)は西暦2000年にリリースされています。現代のユーザーが感じる「古さ」を払拭するには、Silver制御器やFuse Design System(NXGスタイル)の積極的な活用を検討してください。

GUI設計時に注意すること ― 10か条
以下に、LabVIEWでGUIを設計する際に意識すべき10のポイントをまとめます。実際の開発現場での経験をもとにした実践的なチェックリストです。設計フェーズのレビューにもご活用ください。
| No. | ポイント |
|---|---|
| 1 | 単位を記載すること |
| 2 | タスクフローを意識したボタン配置にすること(誰でも使用できるように) |
| 3 | なるべく、ボタンの有効・無効(グレーアウト)を設定すること |
| 4 | ビジーカーソル状態を適宜利用すること |
| 5 | メニューバーの使用を検討すること |
| 6 | ボタンの色を工夫すること |
| 7 | 適切な文字サイズを意識すること |
| 8 | 必要に応じて、ボタンにアイコンを付与すること |
| 9 | スプリッターを使用した画面分割を検討すること |
| 10 | 機能がわかりにくい場合は、操作説明を画面に記載すること |
各条の詳細解説
- 単位を記載すること
数値表示器には必ず単位(V、A、ms、mmなど)を付記します。単位のない数値はオペレータに誤解を与え、重大な操作ミスにつながります。設計段階で「この数値を見た人が単位を自明に判断できるか」を確認しましょう。

- タスクフローを意識したボタン配置
オペレータが実際に行う作業フロー(初期化 → 設定 → 測定 → 保存)に沿ってボタンを配置します。
- ボタンの有効・無効制御
現在の操作状態において押せないボタンはグレーアウト(Disabled)にし、誤操作を防止します。測定中に「測定開始」を押せないようにする、といった制御が典型例です。

- ビジーカーソルの活用
処理に時間がかかる操作(ファイル読み込み・通信待機・演算処理など)では、ビジーカーソル(スピナー)を表示してシステムが動作中であることをユーザーに伝えます。「フリーズしているのか?」という不安を解消し、誤った再操作を防げます。処理の進捗が把握できる場合は、進捗バーとの組み合わせも効果的です。

- メニューバーの活用
環境設定・ログ出力先・ライセンス情報など、頻繁には使用しない機能はメインパネルに並べず、メニューバーに収めます。メインの操作画面がすっきりし、主要オペレーションへの集中度が向上します。

- ボタンの色の工夫
緊急停止ボタンは赤色、動作系は緑系など、色でボタンの重要度や種類を直感的に伝えます。また、同カテゴリの操作ボタン(原点復帰・ステージ移動など)は色を統一し、一貫性を確保します。配色の一貫性は誤操作防止に直結します。

- 適切な文字サイズ
測定現場では、画面から離れた位置でモニタを確認するケースが多くあります。重要な数値・状態表示・警告メッセージには大きめのフォントサイズを設定し、視認性を確保します。小さすぎる文字は、ノイズが多い環境では読み落としリスクが高まります。

- ボタンへのアイコン付与
テキストのみのボタンより、アイコン付きボタンは操作の意図を瞬時に伝えます。LabVIEW標準に含まれないアイコンはフリー素材サイトからPNGをダウンロードして付与できます。
設定手順
対象ボタンのカスタム定義ウィンドウを開き → アイコン画像をクリップボードにコピー →「Import Picture from Clipboard → Decal」を選択。フリー素材:icon-rainbow.com/ icooon-mono.com

- スプリッターによる画面分割
スプリッター(Splitter Bar)で画面を機能別エリアに分割します。「操作ボタンパネル(上部固定)」と「データ表示パネル(スクロール可能)」を分割する構成が代表的です。用途でパネルが明確に区切られるため、直感的な操作が可能になります。

- 操作説明の画面内記載
操作が複雑な機能や、初めて使うユーザーを想定する場合、操作手順を画面内に直接記載することも有効な手段です。「項目をダブルクリックして値をセットできます」といった一言がオペレータの迷いを大幅に減らします。

LabVIEW GUIに関する基礎テクニック
GUIに関する基礎テクニックを活用することで、「見栄えの向上」と「効率的な画面設計」を同時に実現できます。以下に、ペリテックが実案件で頻繁に活用する6つのテクニックを紹介します。
① グラフ等の表示器の拡大・縮小
フロントパネルのウィンドウサイズ変更に追従して、グラフや表示器を自動リサイズする機能です。様々な画面解像度・ウィンドウサイズの環境に対応したレスポンシブなGUIを実現します。
設定方法
対象のグラフ・表示器を右クリック →「Fit Control to Pane」をONにする。スプリッターと組み合わせることで、画面の特定領域のみを拡大縮小可能にすることもできます。



② サブパネルを使用した処理の使いまわし
サブパネル(Sub Panel)は、別VIのフロントパネルを親VI上に埋め込んで表示する機能です。共通の処理フレームワークを維持しながら、試験内容に応じた画面のみを差し替えるアーキテクチャを実現でき、開発工数の大幅な削減につながります。
例1:試験フレームワーク上にサブパネルを配置し、試験VIのみ切り替える(試験1・試験2など)
例2:演算した3D座標データを複数ウィンドウで共有表示する
設定方法
UIにサブパネルを配置し、「Insert VI」端子に表示したいVIのリファレンスを入力するだけです。



③ ボタンへのアイコン付与
LabVIEW標準搭載以外のアイコンをボタンに付与することで、操作の意図を視覚的に伝え、直感的なUI 操作を実現します。「戻る」「次へ」「操作手順」「自動搬送」など、アイコンによって多様な操作の意味を一目で伝えられます。


④ .NET Framework 制御器の活用
.NET Container は、.NET Framework で開発されたオブジェクトをLabVIEWのフロントパネルに組み込む機能です。LabVIEW標準では実現が難しいUI部品(PDFビューア・外部ソフトの表示器など)を画面内に統合できます。



ポイント
ActiveX Container はさらにレガシーなOCX形式のコンポーネント表示に対応しています。.NET Container で対応できない古い部品が必要な場合に活用してください。
⑤ ウィンドウカラーの動的変更
Windows OS標準搭載のDLLをLabVIEWから呼び出すことで、フロントパネルウィンドウ全体の背景色を動的に変更できます。システムの動作状態を色で視覚的に伝える、直感的なステータス表示として活用できます。
測定・記録中:赤色に変更 → オペレータへ強く注意喚起
正常待機中:通常の配色(白・グレー)に戻す
アラーム発生時:黄色・橙色などで警告を視覚化

注意
本機能はWindows 11での動作を確認しています。OS環境によって動作が異なる場合があります。
⑥ MDI(マルチドキュメントインタフェース)の実装
MDI(Multiple Document Interface)を実装することで、1つの親ウィンドウ内に複数の子ウィンドウを表示・管理できます。親ウィンドウを移動すると子ウィンドウも追従し、マルチモニター環境での操作性を大幅に向上させます。
実装手順:
- User32DLL.FindWindow で親ウィンドウ・子ウィンドウの WindowID を取得
- User32DLL.SetParent で親子を紐づける

GUIデザイン実例
上記のテクニックを組み合わせた実際のGUIデザイン例を以下に紹介します。ペリテックでは設計原則を案件に応じてカスタマイズし、現場での使いやすさと視認性を両立したHMI開発を実施しています。





最後に
本記事では、LabVIEWを用いた計測・検査システムのGUI設計における「10か条の設計原則」と「6つの実装テクニック」を、豊富なスクリーンショットを交えて解説しました。
GUIの品質は、システムの信頼性と現場での使いやすさに直結します。「動けばよい」を超えた、オペレータ視点のHMI設計こそが、顧客満足度と現場品質の向上をもたらします。
ペリテックは「計測を理解したSI」として、機能的なシステム開発と並行して、現場で真に使いやすいインタフェース設計を追求し続けています。GUI改善・リニューアルのご相談もお気軽にお問い合わせください。
参考情報・関連リンク
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