CompactRIOとマイコンの違いとは?

産業用システム開発で失敗しない選定ポイントを解説

製造業の試験装置・検査装置・研究開発設備を開発する際、「CompactRIO(cRIO)」と「マイコン(マイクロコントローラ)」のどちらを採用すべきか迷うケースがあります。

どちらもセンサーや機器を制御するプラットフォームですが、設計思想と得意分野は大きく異なります。重要なのは「どちらが優れているか」ではなく、「何を実現したいか」によって最適解が変わるという点です。

本記事では、試験・計測システムのインテグレーションを手掛けるペリテックの視点から、両プラットフォームの違いと選定のポイントをわかりやすく解説します。

構成イメージと主な違いの概要

まず、CompactRIOとマイコンの構成とポイントを図で確認します。

図1:CompactRIO(cRIO)とマイコン(MCU)の構成イメージと主な違い

CompactRIOとは

CompactRIO(cRIO)は、NI(National Instruments)が提供する産業用リアルタイム制御プラットフォームです。リアルタイムCPU(Linux RT)・FPGA・モジュール式I/Oを一体化したアーキテクチャを採用しており、高速制御・高精度計測・高信頼システム構築を短期間で実現できます。

cRIO本体にはリアルタイムCPUとFPGAが搭載され、信号調製機能付きのモジュール式 I/O を介して熱電対・歪みゲージ・4-20mA・高電圧入力など様々なセンサー/アクチュエータへ直接接続することができます。

CompactRIOの主な特徴

  • 信号調製(絶縁・フィルタ・増幅)がモジュールに内蔵されており、外部回路が不要
  • FPGAにより高速・高精度・並列処理が可能(1μs以下の同期精度も実現)
  • ハードウェア基盤が完成しており、開発期間が大幅に短い
  • 耐環境性が高く、産業用途に最適

ペリテックでも多数の試験・計測システムに CompactRIO を採用しています。主な採用用途は半導体評価システム・バッテリー試験装置・モータ制御・鉄道や航空宇宙向け試験設備・大学や研究機関の研究開発設備などです。

マイコンとは

マイコン(MCU:Micro Controller Unit)は、CPU コア・メモリ・タイマー・ADC/DAC・通信機能などを1チップに集積した組み込みプロセッサです。STM32・Renesas RXシリーズ・ESP32・Arduino系ボードなど多種多様な製品があります。

マイコン基板だけではセンサーへの直接接続はできず、信号調製回路・絶縁回路・保護回路・電源回路など「外部の周辺回路」を自作設計する必要があります。センサー/アクチュエータへは自作回路経由での接続となります。

マイコンの主な特徴

  • 回路設計・基板設計・ドライバ開発が必要
  • CPUはシリアル処理が基本(並列性は限定的)
  • 小型・低消費電力・低コストで量産に最適
  • 開発期間は長いが、自由度が高い

家電・IoT機器・自動車ECUなど大量生産を前提とした製品で広く採用されています。

CompactRIOとマイコンの主な違い

① 開発スタート地点が異なる

マイコン開発では回路設計・基板設計・電源設計・ノイズ対策・通信ドライバ開発など多くの下準備が必要です。一方CompactRIO は産業用途向けに完成されたハードウェアプラットフォームです。必要な I/Oモジュールを選定した後、すぐに制御ロジックの開発から着手できます。

「回路を作る」「システムを作る」 —これが最大の出発点の違いです。

② FPGAによる高速・並列処理

CompactRIO 最大の特徴はFPGAを搭載していることです。一般的なマイコンはCPUが処理を順番に実行しますが、FPGAでは複数処理の完全並列実行・高速な信号処理・厳密なタイミング制御が可能です。

試験装置の世界では「1μs 以内の同期精度が必要」という要求も珍しくありません。高速カメラ同期・モータ制御・パルス生成・通信プロトコル処理といった用途では、FPGA の性能が大きな差を生みます。対してマイコンはCPUシリアル処理が基本であり、並列性は限定的です。

③ 信号調製の有無

現場のセンサー信号はそのまま CPU に入力できません。熱電対・歪みゲージ・4-20mA・高電圧信号などは適切な信号調製が必要です。

CompactRIO のモジュールには絶縁回路・フィルタ・保護回路・増幅回路が実装されているため、「センサーを接続してすぐ計測」という環境を構築できます。マイコンでは、信号調製回路・絶縁回路・保護回路・電源回路すべてを自社設計する必要があります(図1右側のオレンジ枠を参照)。

CompactRIO vs マイコン 機能・特性比較

比較項目CompactRIOマイコン(MCU)
プロセッサ構成CPU(Linux RT)+ FPGA
I/O モジュール
CPUコア+周辺機能(1チップ
集積)
主要開発言語LabVIEWC / C++
OS / 実行環境Linux RT(リアルタイム OS)ベアメタル / RTOS等
信号調製モジュールに標準内蔵(絶縁・フィルタ・増幅)外部周辺回路が必須(自作設
計が必要)
開発期間非常に短い長い(回路設計完了後にソフト
開発)
機器単体コスト高い(数十万円〜数百万円)低い(数百円〜数千円)
適合スケール小ロット・研究・産業用装置(1
台〜数十台)
大量生産品・民生機器
並列処理性能FPGA による高速・並列処理が
可能
CPUシリアル処理が基本(並列
性は限定的)
耐環境性・信頼性産業用途向けに設計済み・高い設計者の実装に依存
ハードウェア設計不要(完成プラットフォーム)回路設計・基板設計・ドライバ発が必要

開発コストはどちらが安いか?

多くの方が意外に感じるポイントですが、システム全体ではCompactRIOの方が安くなるケースがあります。

機器単体価格はCompactRIOが数十万円〜数百万円、マイコンは数百円〜数千円と大きく異なります。しかし開発費を含めると話が変わります。

マイコンでは回路設計・基板試作・ノイズ評価・EMC 対策・ソフトウェア開発に多くの工数が発生します。一方CompactRIO では、開発チームが本来注力すべき「制御アルゴリズム」「試験シーケンス」「評価ロジック」の開発に集中できます。1台〜数十台規模の装置では、開発工数削減効果が特に大きくなります。

選定の考え方

図1下段の「選定の考え方」に示すとおり、それぞれのプラットフォームに明確な適合ケースがあります。

CompactRIOを選ぶべきケースマイコンを選ぶべきケース
開発期間を最優先したい大量生産を前提とした低コスト化が必要
1 台〜数十台の装置を作りたい小型・軽量・低消費電力が必要
高精度・高速・高信頼が必要既にハードウェア/ソフトの内製リソースがある
過酷な環境で絶対に落とせない製品として競争力のある価格を実現したい

ハイブリッドなアプローチ

近年増えているのが「試作は CompactRIO、量産はマイコン」というハイブリッドアプローチです。

まず CompactRIO を活用して制御アルゴリズムの検証・センサー評価・システム評価を短期間で実施します。その後、量産仕様が固まった段階でFPGA・マイコン・専用基板へリターゲットします。

ハイブリッドアプローチの流れ

  • CompactRIOで試作・アルゴリズム検証を実施(短納期・低リスク)
  • 制御アルゴリズム・センサー仕様・試験シーケンスを確定
  • 量産仕様確定後、マイコン基板へ移植(リターゲット)

この結果、開発リスクを抑えながら市場投入までの期間を大幅に短縮します

最後に

ペリテックでは、NI の CompactRIO や PXI プラットフォームを活用した試験・計測システムの開発を数多く手掛けています。以下のような課題をお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。

  • まず動くシステムを早く作りたい
  • 試験装置を短期間で立ち上げたい
  • 高精度・高信頼が求められる産業用装置を開発したい
  • マイコン化・量産を見据えたPoC(概念実証)を行いたい

試験・計測システムの豊富な実績をもとに、最適なアーキテクチャをご提案いたします。

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