動く仕様書 LabVIEW

動く仕様書とはボードが組み込まれて無い完成品

一体何を言い出すのだろうか? 
と、このタイトルからして思われる方が多いのではないでしょうか。“動く仕様書”とはプロトタイプと定義しても良いのですが、ここでいうプロトタイプは、見た目も動作も完成品、だけど、中身は組み込みではない。では、組み込んでないとは? 

簡単です。

全てのインターフェース部分を直接・間接的にパソコンに接続し、パソコン側で全ての動作を処理させてしまうのです。これによるメリットは超大で、後で述べることにもなりますが、試作という本来の意味、それは、機能と性能の確認をきちんとする、この本来の役目を確実にこなすことで、その組み込み製品のプロジェクトの成否がかかっていると言えるはずです。

ところで、プロトタイプのイメージはみなさん、どのよう抱いておりますか?ひょっとして配線がぐちゃぐちゃしたプリント基板に無骨に表示機がついていて、LEDなんかむき出しのお化けのような塊が想像されてしまうのではないでしょうか? 最初に申し上げなければならないことだったかもしれませんが、違います。このイメージでのプロトタイプはまだまだ苦労が絶えません。配線、はんだ付け、やり直し、考えただけで目から涙がこぼれそうになりますね。 今回提案しているのは、もっともっとスマートな方法です。

開発品表面(ヒューマンインターフェース)にあるすべての表示機、LED、ボタン類をすべてパソコンに接続出来るようI/Oとそのコミュニケーションを準備します。

そしたら、今後はパソコン上の制御ソフトウエア(次回テーマ)で仕様上望まれている全ての動作やボタンの認識、表示の転送を通信やI/Oボードを介して制御・表示を行います。実は、これこそ冒頭に述べたように“ボードが組み込まれていない完成品”を意味しているのです。しかも、その制御ソフトウエアでのプログラミング変更が簡単であれば、突然の仕様変更にもすぐに対応できることになります。ここまでくれば、プロトタイプの本当の重要性をほぼご理解して頂けたのではないでしょうか。

また、これにより開発者はマーケティングスタッフとも一緒にこのプロトタイプを使って議論が出来ます。ここのボタンはこういう機能にしよう、この画面は暗いから明るくしよう、この動きはこうしないとつまらない、などなど。実際にモニターとしてお客さまを呼んでダイレクトな意見を取り入れるのに使っても良いと思います。しかもその場ですいすいとプログラミング変更して動作仕様変更が可能となるので、相当深い議論がその場で熱く盛り上がることは間違いないでしょう。

しかも、もっと重要な局面にもこの手法は重宝されます。それは、“やめた!”の決断です。もちろんマーケティングスタッフや実際のモニターカスタマーの意見が大きな決定要素となりますが、社運を賭けたプロダクトとなるとやはり重役クラスの決断が必要となり、そのような時にも製品完成のはるか前のプロトタイプ段階、しかも、それが完成品と全く同じ動作を示してくれるのであれば、”動く仕様書”はその決断の手助けになることは間違い無いでしょう。

“動く仕様書”とはただ単にその後の開発の究極の見える化にとどまらず、幅広いマーケティング活動にも使え、かつ、最悪の事態を早める、などと言ったその製品の方向性を早い段階で大きく決断出来る点も見逃してはならないと思います。

また、製品進化論的に言うと、売れ線のものは機能追加などの対応でなんとかそのまま売れて行って欲しいと願うものですが、製品サイクルの速さ、言いかえれば、お客さんの飽きの速さ!に対応するには、ひょっとして単なる進化ではなく、絶滅&進化をする時がある時点で必要なのではないでしょうか。それはきっといままでには無いような発想からもたらされる新商品。その構想をいち早く動く形にもたらすことが出来るこのプロトタイプ手法がどれほど重要かはおわかり頂けるかと思います。

さて、今回提案する方式での“動く仕様書”、別の名をプロトタイプ(逆ですかね?)のメリットを以下に記載しますと、

  1. ボードをおこす前に動作を完全に確認出来る
  2. 仕様変更、機能変更を迅速に行うことが出来る
  3. マーケティング活動にも使うことが出来る
  4. 最終意思決定判断にも役立つ
  5. 組み込みの際に実際に動く仕様書で再確認を取りながら進められる
  6. プロトタイプ屋がひとつの分野として生きていける
  7. “超新製”品を迅速に展開可能

単純化して結論を言えば、“開発しようとする製品の動作仕様変更が簡単な完成版を組み込む前に作って、みんなであれこれ議論しましょう!”ということです。 

実際、どれほどプロトタイプをまじめに工程要素内に取り入れて開発を行っている組み込みプロジェクトがあるのか定かではありませんが、このプロトタイプが大変重要な要素となっており、プロジェクトの成功がまさにこのプロトタイプの成功に大いに依存されるのか多くの開発者はすでに気づいています。

しかしながら、このプロトタイプを実際どの程度本気で扱うかは、各企業、各部署、各担当者で相当の温度差があるのではないでしょうか。もし、あなたが温度の寒い側にいらっしゃる方なら、このプロトタイプを“出来ないのでは無い、やっていない“の論理、ただ単に何かの理由で出来るのだけどやっていなかったのではないでしょうか。

また、この方式のプロトタイピングは、モックアップ専門業者さんが試作の依頼を受けた時、通常これまででは実現出来なかった動きや光のある、より完成品に近い形での対応が可能になる点も大きなアドバンテージとなります。

次回は、効率的にこのプロトタイプを構築していくために最も適している開発言語のひとつであるナショナルインスツルメンツ社製“LabVIEW”をご紹介いたします。

このLabVIEW、優れものです。