SDRで学ぶ無線通信
Peritec EduSDR ― 大学・研究機関向け通信教育システム

はじめに:無線通信教育の「壁」
無線通信の教育現場では、長年にわたって共通の課題が指摘されてきました。教科書で学ぶ変調理論と、実際の通信システムがどのように動いているかの間には、大きなギャップが存在します。QPSKのコンスタレーション図を描くことはできても、それが実際の電波としてどのように送受信されるのかを体験した学生は多くありません。
さらに、市場に出回る既存の教育キットの多くは「ブラックボックス」です。計算された答えを表示してくれるが、内部でどのようなアルゴリズムが動いているかを学生が理解し、自らシステムを構築する力を育てることはできていません。
株式会社ペリテックが提供するPERITEC EduSDRは、この「理論と実装のギャップ」と「ブラックボックス問題」を同時に解決するために開発された、SDR(ソフトウェア無線)ベースの実践的教育プラットフォームです。
1. SDR とは何か ― なぜ教育に最適なのか
SDR(Software Defined Radio:ソフトウェア無線)とは、従来はハードウェア回路で実現していた無線信機能(変調・復調・フィルタリング・符号化など)をソフトウェアで実装する技術です。物理的なアナログ回路の変更を必要とせず、プログラムを書き換えるだけで様々な通信方式に対応できます。
教育用途においてSDRが優れている理由は明確です。通信システムの「中身」がすべてソフトウェアとして可視化されるため、学生は内部アルゴリズムを直接確認・修正しながら学ぶことができます。また、同一のハードウェアでシングルキャリアからOFDM・MIMOまで幅広い通信方式を実験できるため、教育カリキュラムの進行に合わせて段階的に難易度を上げていくことが可能です。
SDRが教育に適している理由
- ソフトウェアで通信機能を定義するため、内部処理が透明で学習しやすい
- 同一ハードウェアで多様な変調方式・通信規格を実験可能
- パラメータを変えながらリアルタイムに結果を観測できる
- 独自のアルゴリズムを組み込み、その動作を即座に検証できる
- 将来の技術進化にもソフトウェア更新で対応できる
2. 通信教育が抱える3つの課題
Peritec EduSDR の開発にあたり、大学・研究機関の教育現場が直面する課題を整理しました。
課題① 理論と実装のギャップ
数式中心の座学だけでは、QPSKなどの基礎的な変調方式からMIMOのような複雑な理論までを体系的に結びつけて理解させることが困難です。学生は試験には合格できても、実際の通信システム開発の場面で即戦力になれない、という声が教育現場から多く聞かれます。
課題② ブラックボックス化された既存キット
市販の教育用RF評価キットは、内部構造が隠蔽されているものが多く、学生がソースコードレベルで仕組みを理解し「自らシステムを構築する」スキルを育てることができません。与えられた手順をなぞるだけの実験では、応用力は身につきません。
課題③ 予算と拡張性のジレンマ
基礎学習から最新の研究課題(大規模MIMO・5G波形等)までカバーしようとすると高価な上位機種が必要になり、限られた教育予算では複数の実験ベンチを整備することが難しい状況です。
3. Peritec EduSDR ― 3 つの解決アプローチ
アプローチ① 理論とコードを紐づける包括的教材
Peritec EduSDR の最大の特徴は、ソフトウェアと教材が一体になっている点です。単なる測定ツールではなく、以下の3層から構成される包括的な学習環境を提供します。

| 教材の構成 | 内容 |
|---|---|
| 第1層:基礎理論解説 | 変調方式の数式・概念から丁寧に解説 |
| 第2層:システム設計・開発ガイド | 送受信システムの設計思想・アーキテクチャ |
| 第3層:LabVIEWソースコード解説 | 実装コードを理解できる詳細解説 |
QPSKなどの基礎変調から高度なOFDM・MIMOまで、理論の説明とLabVIEWソースコードの詳細解説がセットで提供されます。学生は「なぜそのコードが書かれているのか」を理解した上で、自らの手でゼロから無線送受信システムを構築することができます。
アプローチ② パラメータ変化のリアルタイム可視化

GUI から通信パラメータを即座に変更すると、その影響がリアルタイムに可視化されます。たとえば搬送波周波数やシンボルレートを変更したとき、コンスタレーション図やBER(ビット誤り率)がどのように変化するかを画面上で直接確認できます。
リアルタイム表示対応項目
- コンスタレーション図(変調品質の視覚的確認)
- アイパターン(シンボル間干渉の観測)
- TX / RX リアルタイム波形
- 受信側の受信電力(RSSI)
- スループット・送受信機間の周波数オフセット
- BER(Bit Error Rate)/ EVM(Error Vector Magnitude)
座学で学んだ理論が「生きた現象」として目の前に現れることで、学習の定着率は飛躍的に向上します。さらに学生が自らパラメータを変えて実験することで、能動的な学びを促進します。
アプローチ③ SDRベーススの柔軟なハードウェア構成

Peritec EduSDR は特定のハイエンド機種に依存しません。NI USRPシリーズ全般に対応しており、教育機関の予算に合わせた低価格帯のUSRP-2920から、USRP-2954、X410等の上位機種まで幅広く選択できます。既存のPCと組み合わせるだけで即座に実験環境を構築でき、専用の計測モジュールは不要です。
4. 学習ロードマップ ― 段階的な習熟設計
Peritec EduSDR は、初学者から研究者まで段階的に習熟できるように設計されています。

| 仕様項目 | 内容 |
|---|---|
| Stage 1 | シングルキャリア変調(BPSK / QPSK)の送受信実験、コンスタレーション観測、BER測定 |
| Stage 2 | OFDM変調の仕組み理解、マルチキャリア伝送の実装、パイロット信号・チャネル推定 |
| Stage 3 | MIMO(2×2、4×4)の空間多重・空間ダイバーシチ実験、ビームフォーミング基礎 |
| Stage 4 | 取得した知識を応用し、独自のアルゴリズムや高度な研究(5G波形、適応変調、機械学習との融合など)を実装し、その動作を検証する。(オプション) |
各ステージはモジュール式に設計されており、教育カリキュラムの進度に合わせて柔軟に組み合わせることができます。また、ペリテックが教育機関のニーズに合わせてカスタマイズやサポートを提供しており、独自の実験課題を追加することも可能です。
5. 主要仕様
| 仕様項目 | 内容 |
|---|---|
| 推奨ハードウェア | NI USRPシリーズ全般(低コスト教育用USRPから USRP-2954 等の上位機種まで対応) |
| 動作周波数範囲 | 10MHz〜(使用USRPハードウェア仕様に依存) 例:USRP-2954 の場合 10MHz〜6GHz |
| 対応通信モード | シングルキャリア(QPSK等の基礎変調)、OFDM、MIMO(2×2 または 4×4) |
| 付属ドキュメント | 基礎理論解説、システム設計・開発ガイド、LabVIEWソースコード詳細解説 |
| リアルタイム表示 | コンスタレーション、アイパターン、TX/RX波形、BER(Bit Error Rate)、EVM(%)、RSSI、スループット、周波数オフセット |
| 必要ソフトウェア | LabVIEW(NI製 SDRドライバ含む) ※LabVIEWのソースコードを閲覧・編集するにはLabVIEW開発環境が必要となりますが、本ソフトウェアを実行するのみであれば、開発環境は不要です。 |
| カスタマイズ | 教育カリキュラムに合わせたソフトウェア改修・独自課題追加に対応 |
最後に
限られた予算でも高い教育効果を発揮し、基礎教育から最先端の研究まで一貫して対応できるPERITEC EduSDR を、ぜひ貴学のカリキュラムにご検討ください。
株式会社ペリテックは、NI Gold Alliance Partnerとして、LabVIEW / NI USRP を活用したシステムインテグレーションに豊富な実績を持ちます。Peritec EduSDRの提供にとどまらず、以下のサポートを一貫して提供します。
Peritec EduSDR は、SDR技術を活用した実践的な学習環境と、理論・設計・実装を包括的にカバーする教材を組み合わせることで、従来の教育システムでは実現できなかった「真の理解」と「実装能力の育成」を実現します。
