JAXA鹿児島宇宙センター・内之浦宇宙空間観測所の気象観測システム開発
株式会社ペリテックが過去に開発したJAXA鹿児島宇宙センター・内之浦宇宙空間観測所の気象観測システムの開発事例を紹介します。
背景
宇宙航空研究開発機構(Japan Aerospace Exploration Agency : 略称 JAXA)様から種子島宇宙センター・ 気象観測システムの更新と内之浦宇宙空間観測所・気象観測システムの新規開発をNI社の製品とNI LabVIEW を使用して開発させて頂くことになった。本システムは、種子島宇宙センターと内之浦宇宙空間観測所に設備する気象観測センサを取り込むシステムとなる。種子島宇宙センターに関しては既存の『気象データ処理設備』の老朽化更新及び「地震観測システム」の取り込み機能を追加することを目的とし、内之浦宇宙空間観測所はイプシロン打ち上げ対応のための新規設備となる。
要求仕様
種子島宇宙センター
- 風向風速計 設置 2箇所 全 16チャンネル
- 感雨計、降雨強度計、雨量計 設置 2箇所 全16チャンネル
- 雲低高度計、電界計、温度計 設置 2箇所 全 6チャンネル
- 地震計 設置3箇所 全3チャンネル
内之浦宇宙空間観測所
- 風向風速計 設置 1箇所 全 8チャンネル
- 感雨計、降雨強度計、雨量計 設置 1箇所 全 8チャンネル
- 雲低高度計、電界計、温度計 設置 1箇所 全 3チャンネル
- 地震計 設置 1箇所 全 1チャンネル
- 観測データは、毎秒・気象室へ転送してファイル保存されること
- 内之浦宇宙空間観測所のデータも種子島宇宙センターへ転送されること
- 専用ネットワークに接続した端末から観測データがリアルタイムで確認できること
- 専用ネットワークに接続した端末から過去データが検索できること
- 機器構成は可能な限り最小化し、シンプルな構成とすること
- 開発、保守、運用、機能追加に関して低コスト化に留意すること
課題
耐環境性、コンパクト性
気象センサは屋外に設置されるため、アナログ等信号の種類によっては伝送距離を長くすることが難しい 場合がある。そのため、センサ付近の収容箱内にシステムを設置する必要があった。収容箱は温度調整機 能がないため、夏場は箱内の温度がかなり上昇することが見込まれた。そのため、高い耐環境性と限られたスペース内に設置するコンパクト性が求められた。
ネットワーク上からのデータ閲覧機能
既存システムはシステム本体が設置してある気象室からのモニタリング・データ集録機能のみだったが、客先の専用ネットワーク上(JAXA-net)に接続したどの端末からも、任意の気象センサのデータをモニタリ ングできるよう機能要求があった。これにより、誰でも気軽にいつでも気象データを見ることができ、多くのユーザに使用してもらいたいと いう客先の意向を実現する必要があった。
信頼性の高いシステム
本システムは 24時間 365日、データを集録し続ける必要がある。また、リアルタイムでモニタリングする 必要があるため、常にシステム本体があるサーバにデータを送り続けるのだが、仮にネットワーク上に不具合が生じた場合は、その期間分のデータを失ってしまう恐れがあった。そのため、データロスがないよう、高い信頼性が求められた。
システム構成
気象センサのデータ集録は NI 製品を基本ハードウェアとして採用し、構成した

- NI cRIO-9111:4 スロット NICompactRIO シャーシ
- NI cRIO-9024:Real-Time PowerPC コントローラ
- NI 9219:ユニバーサルアナログ入力モジュール 4ch
- NI 9870:RS232 シリアルモジュール、4ポート
- NI 9871:RS485 シリアルモジュール、4ポート
- シャーシとコントローラは全て共通としたため、保守・メンテナンス性を高めた
- 設置場所毎に気象センサは異なるため、上記のモジュールを差し替えることで、容易にどのセンサにも 対応可能
- 今後センサが増えたとしても、予備チャンネル・スロットを設けてあるため、拡張性も高い
- NI CompactRIO は6箇所に1台ずつ設置した


導入効果
1.耐環境性、コンパクト性
NI cRIO-9111 の動作温度は、-40℃から 70℃のため、屋外の厳しい環境下にも耐えることができた。また屋外収容箱はスペース的な問題もあったが、非常にコンパクトなため、難なく設置が可能だった。
2.ネットワーク上からのデータ閲覧機能
LabVIEW の Web サービスを導入し、ユーザはブラウザから任意のNI CompactRIO にアクセスすることができ、リアルタイムで気象センサの値をモニタリングすることが可能となった。

3.信頼性の高いシステム
基本的にNI CompactRIO は集録したデータをUDP でサーバに送り続けてリアルタイムで表示しているが、データは常にコントローラに接続されたUSBメモリに保存される。ネットワーク上に何らかの不具合が生じたとしても、スタンドアローンでロギングし続けるため、データのロスの心配がない。24 時間に1回、1日分のデータをFTPでサーバに転送することで、サーバのデータロスを回避した。


まとめ
大規模なインフラの整備は長期にわたるため、既設システムの導入は億単位のコストがかかっていた。しかし、システム全体に関するプログラムをLabVIEW内で統一的に構築できること、およびNI CompactRIOの採用により、従来の1/2以下、約5ヶ月という短期間でシステムを完成することができた。これらにより、既存システム導入時の 1/5 以下のコストで構築することができた。 また、NI CompactRIO のソフトウェアを修正する場合、NI CompactRIO が設置してある場所まで行くことなく、ネットワークで接続されている気象室の管理 PC からソフトウェアの入れ替えが可能なため、保守性にも優れたシステムとなっている。


